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<<自分のクラスでバトロワする妄想した奴ちょっとこい【2】ホーム自分のクラスでバトロワする妄想した奴ちょっとこい【4】>>

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自分のクラスでバトロワする妄想した奴ちょっとこい【3】このエントリーを含むはてなブックマークこのエントリーへのつぶやき

自分のクラスでバトロワする妄想した奴ちょっとこい【1】
自分のクラスでバトロワする妄想した奴ちょっとこい【2】 の続き↓

※この記事に登場する人物・事件などはすべて架空のものです。また、暴力シーン、銃撃シーン、流血シーン、その他グロ(ry

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214 名前: 1 2007/01/07(日) 20:10:33.28 ID:s936oG6t0

<悪夢>
 ボウガンを下ろした。
 フジチカはもう死んだみたいだ。
 さっきまで狂ったみたいに床を転がりまわっていたが、今はもうピクリとも動かない。
 ボウガンの矢はフジチカの頭に刺さっている。 
 ……ヒトエも、ひどいことするな。 
 
 トンマを殺した私は、トンマの荷物を自分のリュックに入れてあてもなく廊下を彷徨った。
 誰も見当たらない。爆発の音と銃声はしたけど、それ以外は何も。
 皆どこに居るのだろう? 教室の中に入っているのかな?
 何だか、何もかもどうでも良くなった。
 どっと、疲れた。
 私は放送室の前のちょっとしたスペースに座った。そして眠りについた。
 そして、夢を見た。







215 名前: 1 2007/01/07(日) 20:11:01.38 ID:s936oG6t0

 暗いところで、タナカがこっちを見ている。
 私はタナカに近づこうとする。だけど、近づけない。
 どんどんタナカはそっちに行ってしまう。
 どれだけ頑張って近づこうとしても、タナカは向こうに行ってしまう。
 ……怖かった。
 何だか、タナカが死んだような気がした。
 行かないで、行かないで! タナカ、行っちゃ嫌だよ!!
 必死で叫んだ。でも無理。タナカはどんどん離れていく。
 そして、消えてしまう。
 私は、暗闇にポツンと取り残された。

 耳が壊れそうになるくらいの轟音。
 暗闇から学校に戻る。
 すると、フジチカとヒトエが居た。








217 名前: 1 2007/01/07(日) 20:12:19.20 ID:s936oG6t0

 話の内容から推測して、フジチカは地雷を踏んで足が無いらしい。
 狂ったようにもがいている。 
 英語の教科書で地雷を踏んだマラソンランナーが出てきていた。
 その影響か、地雷を踏んでも生きられるのだ、と思い込んでいた。
 だが、そんなに甘っちょろいものじゃないみたいだ。
 確かに生きることは出来る。だが、激痛を伴う。
 フジチカを見て、地雷の恐ろしさが改めて感じられた。
 でも、この感じは何だ?
 すぐ目の前に死にそうな人がいるのに。
 まるで映画を見ているみたいだ。






218 名前: 1 2007/01/07(日) 20:12:44.30 ID:s936oG6t0

フジチカを痛みから解放してあげた私は、ボウガンをポケットにしまった。
 トンマの血が少しだがこべりついている。
 ……タナカを、探そう。
 私はタナカのことが、好きだ。恋愛感情とかじゃなくて、親友だ。
 リュックを背負って立ち上がる。まず1階を探してみよう。それから2階を探そう。
 神様、お願い。願いをかなえて。
「タナカが、まだ死んでいませんように」
「あら、チャーキ」
 振り向かなくてもわかった。
 だが振り向いた。予想通り。ヒトエだ。
「どこに行くの? うちにも教えてよ」
 彼女は微笑んでいる。
 大きい銃を抱えている。
 
 体が、固まってしまった。 
   
 嫌、だ。死にたく、ない。






219 名前: 1 2007/01/07(日) 20:13:25.55 ID:s936oG6t0
 
<放物>
 
 何気なく木工室に入ったのは、やはり正解だった。 
 誰もいないし、凶器が山ほど存在したからだ。
 ノコギリ、カンナ、鉄やすり。
 その他大工用具色々。これで近距離の武器には不自由しないな。 
 あとはコイケを探すだけだ。色々詰め込んだせいで少しリュックが重くなった。
 私は机の上に寝転ぶ。普段なら怒られるだろうが、今は誰も居ない。少しだけ得した気分だな。
 
 そうだ、私ナホコはユウネを殺したんだよな。
 相変わらず殺し合いをしているという実感が沸かない。時計は2時をさしている。
 もう殺し合いが始まって12時間が経つ。だけど、全然わからない。
 夢じゃないかな。まだそう思う。とても長い夢。
 そんなことありえないんだけど、でもそう思ってしまう。
 ……普通こっちの方がありえないんだけどね。バトルロワイアルなんて。







220 名前: 1 2007/01/07(日) 20:14:23.55 ID:s936oG6t0

憲法が改正されたのは、親が言っていた。学級通信にも書いていた。
 だが、まさかその中にBR法が入っていたなんて。両親がちらっと言っていたのを思い出す。
「試験的にBRを日本でやるんだって。ここは大丈夫かしらね」
「大丈夫だろ。全国で一校だって首相が言ってたし。こんな田舎の学校が選ばれるわけないよ」
 お父さん。選ばれたんだよそれが。
 私は可笑しくなって一人で笑ってしまった。傍からみたらただの怪しい人だろう。
 だが見ている人など居ない。笑うのを止めた。虚しくなる。

 機械の音。
 音が、聞こえる。
 起き上がって耳を澄ましてみる。
 何かを切るような音。ウィーン。そんな音が聞こえる。
 これは……何の音だろう。
 音の出所は、黒板側の出入り口。
 あの向こう側で、何かが動いている。







221 名前: 1 2007/01/07(日) 20:15:12.61 ID:s936oG6t0

 少し眠たい目をこすり、立ち上がる。 
 次第に恐怖という心が芽生えてきた。
 ……まさか、凶器か。
 誰か居るのは間違えない。
 誰だ。誰が居るんだ。
 冷静に考えてみる。そして、あるものが頭のなかに浮かんだ。
 チェンソー。それだ! チェンソーが動いている。
 向こう側にいる奴は、私をチェンソーで切り殺そうとしてるんだ!
 
 とっさにリュックの中をまさぐる。
 鎌。ノコギリ。鉄やすり5本ほど。
 ……威嚇しよう。
 こっちにも武器があるってことを知らしめてやるんだ。
 そしたら相手も少しは驚くだろう。その時がチャンス。 
 相手は扉の下側に隠れている。だから、扉のガラスを割れば多少ダメージを与えられるだろう。
 ガラスが相手に突き刺さる。そしたらこの部屋を出よう。出来ればあまり殺しはしたくない。
 ……チェンソーの音が耳障りだ。何となくむかつく。
 私は鉄やすりを手に持ち、黒板の横の扉めがけて思いっきり投げつけた。
 放物線を描いて鉄やすりは飛んでいく。少し大きめのやすりだったので飛んでいくか心配だったが、見事扉のガラスに命中した。







222 名前: 1 2007/01/07(日) 20:15:53.92 ID:s936oG6t0

 
「うわっ!」
 ガラスが派手な音を立てて割れる。それと同時に、ものすごい悲鳴が聞こえた。
「ぎゃあああああああああああ! ちょ、な、痛っ! ああああああああああぁぁぁぁぁ!!」
 ガラスが刺さったにしては少し大袈裟すぎるリアクション。相変わらずチェンソーの音は鳴り続けている。
 何かが飛び散る音。味噌汁をこぼしたような、そんな音も聞こえた。
 少し怖くなった。悲鳴が大きすぎる。動物のような悲鳴が私の鼓膜を破きそうなくらい聞こえてくる。
 ……出よう、木工室を。怖い。
 リュックを背負った。武器が増えたせいで、少し以上重くなっている。
 チェーンソーの音は、まだ響いていた。
 
 【18人】








225 名前: 1 2007/01/07(日) 20:17:34.13 ID:s936oG6t0
 
<極端>


 あー。
 私、何やってんだろ。

 大の字になって視聴覚室で寝ていた。
 広々とした部屋なだけあって、開放感がある。
 だが気分は一向に優れない。
 チョクジの無表情な死体がまた頭に浮かんでくる。
 ……気持ち悪い。
 私は起き上がった。お腹が減った。
 さっきコッペパンは食べてしまった。水も飲んだ。もう何も無い。
 また大の字になって寝転ぶ。
 ……ナホコ、何やってるかな。
 コイケ、キヨミ。何やってるかな。
 生きてるかな。死んでるかな。
 まだ、楽しくやってるかな。
 もしかしたら、もう死んでるかもしれない。
 ……止めよう。欝になるだけだ。





226 名前: 1 2007/01/07(日) 20:18:07.95 ID:s936oG6t0

 扉が開く音がした。
 私はゆっくりと体を起こす。
 本当は逃げるべきなのだろう。銃を構えるべきなのだろう。
 だが、何だか体が重くて思い通りに動かなかった。
 
 目をこすった。
 え、こんなことありえるの?
 もう一度目をこすった。
 それは消えない。
「……キ…キヨミ?」
 扉の前に立っていたのは、キヨミだった。
「キヨミなの?」
 涙がこぼれそうになるが、堪える。
 こんな久々の再開で、かっこ悪いところは見せられない。
 嬉しかった。やっと友達と再会できた。
 仲間割れしたこともあった。けど、仲直りした。 
 かけがえのない、私の友。
 去年の9月にキヨミが転校してきて、気がついたら友達になっていた。
 キヨミは人によく気を使う。そして優しい。たまに毒舌。
 ガサツな私にはないものを持っている人だ。
「生きててよかった!」
「来ないでカキミ!」
 キヨミが叫んだ。
 私は面食らった。







227 名前: 1 2007/01/07(日) 20:18:28.54 ID:s936oG6t0

「ど……どうしたの?」
 キヨミは泣きそうな顔でこっちを見ている。 
「とにかく、来たら駄目!」 
「キヨミちゃん、何余計なこと言ってるの?」
 静電気が流れたような音がした。
 鈍い音とともにキヨミが倒れる。
「言った通りにすればいいのにさ」
 扉から、また新たに人が出てきた。
 ……今度こそ死ぬかもしれない。
 探知機のような小型機械をもったマツバラと、サーベルを持ったロクコちゃんがキヨミの体を踏みつけて視聴覚室に入ってきた。
 
「カキミちゃんは、良い人? 悪い人?」

 ロクコちゃんは微笑む。サーベルの血を舐めながら、微笑む。







229 名前: 1 2007/01/07(日) 20:19:09.83 ID:s936oG6t0

<直感>
 

「喉渇いた」
 タナカの声で目が覚めた。「喉渇いた」という言葉で目が覚めたのは生まれた初めてだ。
「……水切らしたのかよ」
「いつの話してるのコーク。もうとっくの昔に切らしてるよ」
 時計を見る。4時ちょっと前。外は薄暗くなり始めていた。
 タナカが空のペットボトルを指差している。
「水汲みにいかない?」
「危なくないか?」
「何言ってるのコーク」
 チッチッチと言いながら、タナカは指を振った。
「その便利マップは何の為にあるのさ」
「あ……」
 そうでした。このマップがありました。1本とられた気分。タナカは誇らしげに微笑んだ。
「じゃ、行こっか」
「え? 僕も行くの?」
 もう一眠りしたい気分だった。
 あまり睡眠をとっていないので、安全な今のうちに寝ておきたかったのだ。
 だがタナカは残酷である。
「当たり前じゃん。女の子を護衛するのは男の子って昔から決まってるんだよ」
 そんな決まり聞いたことないぞ。






232 名前: 1 2007/01/07(日) 20:20:25.46 ID:s936oG6t0

でも、タナカ一人で出て行ってそのまま殺されるってのは……嫌だな。
 後味悪いし、仲間は一人でも多いほうが良いもんな。
「よしわかった。僕がタナカの周りに敵がいないか調べるよ。それなら危なくないだろ? 安全に水汲めるだろ?」
「コークさ……もし誰かが襲ってきたら戦える武器あったっけ?」
「う……」
 そういえば、無い。
 敵が襲ってきたとしても対応できない。津波が来るとはわかっているけど家に居るのと同じだ。
 これじゃ、水汲みどころか生き残るのが不可能になってしまう。
「そ、そういえばさ。タナカの武器って何なんだよ?」
「タナカの武器?」
 自分のことを自分の苗字で呼んだよな。タナカって珍しい。
「催涙スプレー」
「何とも微妙だな」
 しまった。思ったことがそのまま口から出てしまった。
 銃とかナイフとかそういう武器じゃないのか。使えない。
 ……でも無いよりはましか。少なくともDSで殴るよりは使えるだろ。
「よし。じゃその催涙スプレー持って水汲みに行こう」
「おっけー。コーク、タナカがピンチになったときは助けてよ」
「逆に僕が助けて欲しいくらいだ」
 マップにちらっと目を通す。
 35分の18。丁度半分くらいが死んでいる。






234 名前: 1 2007/01/07(日) 20:21:13.06 ID:s936oG6t0

 結構ペースが早いな。3階が禁止エリアになったから、2階で殺し合いが勃発してるのかもしれない。
 2階のマップを見ると、ヒトエとチャーキの番号がついた点が保健室の前に居るのが目に入った。
 ……異色のコンビだな。
「おいタナカ、ヒトエとチャーキが一緒に行動してるみたいだよ」
 何気なくタナカに声をかけた。
 ドアの前で、タナカが固まった。
 少し驚く。僕、なんか悪いこと言ったかな?
「……コーク」
 さっきまでとは、確実に声色が違う声でタナカが言う。
「2階行くよ」
「は?」
「2階行く」
 タナカは僕のほうを向いた。
 その目は、怒ったときの先生の目に似ていた。
 抗議しても聞いてくれなそうだ。
「……チャーキのとこに行くのか?」
「早く行くよ」
 タナカはドアから出た。
 僕も慌ててそれに続いた。
 
 5組から出る時、片手に持った地図をまた見た。
 保健室の前の点が、一つ消えていた。 
 
 【17人】  







235 名前: 1 2007/01/07(日) 20:21:49.24 ID:s936oG6t0

<偶然>
 私はその場に寝転がる。体中が痛い。
 目の前には、死体が二つ。
 フジチカの足がない死体と、ヒトエの首から血が流れている死体……まだ死んでいるかはわからないが。
 でもあれだけ首から血を流せば、普通死ぬだろう。
 死なないとおかしい。頼むから、死んでいてくれ。
 ついさっきまでの出来事が、走馬灯のように私の頭の中に浮かんだ。
 
「どこに行くの? うちにも教えてよ」
 ヒトエが優しげな微笑みを浮かべる。手に大きな銃を抱えて、優しげな微笑みを浮かべている。
 体が、動かない。
 私、死ぬのか。
 ポケットにはボウガンが入っている。だけどあんな銃に抵抗できるわけがない。
 しかも矢はあと1本しかないのだ。そのボウガンも体が固まって、出すことが出来ない。
「何、教えてくれないの?」
 ヒトエがこっちにゆっくりと近づいてきた。
「当ててあげようか。あなたがどこに行くか」
 全身から汗が滝のように流れ出す。
 何か、言わなくちゃ。じゃなきゃ、何をされるかわかったもんじゃない。
「ど、どこにも、行かない、けど」  
 やっとのことで一文捻り出した。
 マラソンを終えた後のように、息がものすごく上がっていた。






237 名前: 1 2007/01/07(日) 20:22:21.73 ID:s936oG6t0

「へぇー」
 ヒトエには私の言動がとても面白いようで、満面の笑みを浮かべている。
 蛇に睨まれた蛙というのは、こんな感じなんだろうな。
「うちはね、こう思うの。チャーキはタナカに会いに行きたいんだ」
 図星。その通りだ。……何故わかっのだろう。
「さっきチャーキ、タナカのところに行こうって呟いてたじゃない。それでわかったんだよ」
 ヒトエはアハハハと笑う。
「な…何が可笑しいの」
「え? だってさっきからチャーキ、面白いほど怯えてるんだもん。アハハハ」
 いつものヒトエじゃない。いやこっちが素なのか。
 とにかく怖い。ここから離れたい。
 だが逃げたらあの大きい銃で撃たれるような気がする。でも逃げたい。だが体が動かない。
「そうだチャーキ、面白いこと教えてあげようか」
 耳を塞ぎたかった。ヒトエの声を聞きたくない。さっきのフジチカにかけていた言葉を思い出す。
 怖い。助けて。助けてタナカ。
「うちさっきね、タナカ殺したんだよー」
「え?」
 急速に周りの風景の色が無くなっていく。
 白黒の空間に、私とヒトエだけが居るような錯覚。
 うちさっきね、タナカ殺したんだよー
 うちさっきね、タナカ殺したんだよー
 その言葉が私の頭の中で何重にもなって響いた。
「この銃で、撃ったんだ。あっけなかったね。人間って、死ぬのはかなりあっけないからね」
「少し黙れ」
 少し黙レ。お前の声などキキタクナイ。
 頭がくラくラすル。ドコかに寝転がリたい







243 名前: 1 2007/01/07(日) 20:26:01.03 ID:s936oG6t0

「何チャーキムキになってるのさー。嘘に決まってるでしょ嘘」
 またヒトエの軽薄な笑い声。
 突然、体が軽くなった気がした。
 私はとっさに後ろを向き、走り出す。
 ここに居てはいけない。心が変になる。殺される。
 今はタナカに会わなきゃ。合流しなきゃ。
 まさか、死んでるはずないよね。
 そんなこと、あるはずないよ、ね。
 
 銃声とともに体が、宙に浮いた。
 何が起こったのかわからない。景色がスローモーションで動いている。
 周りの景色が回って、回って。
 だんだん体が下に落ちて。落ちて。落ちて。
 激痛が走った。放送室の扉に体が叩きつけられる。猛烈な吐き気。内臓が上に上がってくる感覚。
 そして、笑い声。
「逃がすわけないじゃない」
 高い、勝気なヒトエの声が聞こえた。
 目を半分開けて、ヒトエを見上げてみる。
 ヒトエは銃を抱えて保健室に入ろうとしていた。
 とても大きい銃だ。さぞかし威力があっただろう。
 一つありえないことに気がついた。
 
 
なんで、私は撃たれたのに生きてるんだろう。 







244 名前: 1 2007/01/07(日) 20:26:38.87 ID:s936oG6t0

 素早くポケットからボウガンを取りだす。そして狙いを定めるまもなく撃った。
 あっけなかった。ヒトエの言う通りだった。
 首に刺さっている矢。体がその場に倒れた。銃も床に音をたてて落ちた。
 血が、すごい勢いで床に広がっていった。
  
 私、生きてる。
 生きてるよ。なんとか、生きてるよ。
 かすかにヒトエが呻いたのが聞こえた。
「うち……が…なんで…」







247 名前: 1 2007/01/07(日) 20:33:22.35 ID:s936oG6t0


<索敵>
 

「ヒトエがチャーキに殺された」
 タチヒトの棒読み声。俺は驚く。
 あいつ、今日の朝トンマも殺している。一体、どんなすごい武器持ってるんだよ。 
「そうか……チャーキ、すごいな」
「そう?」
 PSPを眺めながら、タチヒトは呟く。
 さっきから激しく操作しているが、一体何をしているのだろう。
 外を眺める。もう外は暗くなりかけている。
 電気がつけたり消えたりしている古い街灯が見えた。
「この首輪の爆弾を解除するのは、どうやら無理らしい」
「そりゃ無理だろ」
 即座に返答する。いや、無理だろ。
 中学生に解析されたらこのバトルロワイアルが成り立たない。
 逃げる奴が続出だ。タチヒトを通常の中学生として捉えていいのかは謎だが。
「正確に言えば時間が少し足りない。あと3日あればこんなプログラム、簡単に解析して壊している」
「……もう腐るほど言ってるけどさ。お前って、本当に天才だよな」
 タチヒトは答えない。興味がないようだ。
 昼が、終わる。






249 名前: 1 2007/01/07(日) 20:34:02.01 ID:s936oG6t0

 タチヒトの死人リポートを聞いていると、ヒトエの前に死んでいるミキサで学級の半数が死んだらしい。
 ちなみにミキサの死因はチェーンソーによる自殺。
 度胸ある奴だ。俺なら絶対そんな自殺はしないだろう。第一想像するだけでも痛い。
「アトヤマ」
「ん」
「そろそろ俺たちも行動を開始する」 
 ヘッドホンをリュックの中にしまいながらタチヒトはそう言った。
「ずっとここに隠れているわけにもいかない。83%の確率でハシダかオオタケがここを訪れる」
「ハシダが?」
 存在を忘れていた。そういえば、ハシダ居たな。
 そして、オオタケ。まだ生きてるってことか。
「オオタケと合流出来るなら、ここに居ていいんじゃないか?」
 タチヒトは俺のほうを見る。すでに第二美術室は薄暗くなっていたので、表情はよく見えなかった。
「アトヤマ。俺たちの目的は何だ」
「何って、生き残ることでしょ」
「生き残るのにオオタケは必要ない」
 言い放った。少しだけ腹が立つ。だが、口には出さないことにしよう。
 下手なことを言うといつ殺されてもおかしくないからな。







251 名前: 1 2007/01/07(日) 20:35:38.13 ID:s936oG6t0

「じゃ、これからの行動を説明するぞ」
 タチヒトの背負っているリュックは、俺のリュックの倍くらいの大きさがある。
 何が入っているのだろう。気になったが、だいたいは予想が出来る。パソコン関係の何かだろう。
「コイケが潜む教官室へ向かう」
「え? な、何でだよ?」
 タチヒトは面倒臭そうな顔をこっちにむける。おい。俺はお前と違って凡人なのだよ。
 わかるわけないじゃない。お前の作戦の目的なんて。
「今俺の手には、ガソリン入りペットボトルがある」
 そう言ってタチヒトは自分のリュックから2ℓペットボトルを取り出した。
 暗くてよく見えないが、その中にガソリンが入っているのだろう。
「そしてコイケはライターを持っている。彼女が所持しているライターとガソリンがあれば、一網打尽が可能になる」
 何故コイケがライターを持っているのがわかったの? という質問が頭に浮かんだが止めて置くことにした。
 盗聴してわかったのであろう。位置も、所持物も。ああ恐ろしい。
「今からC階段を降りる。そして止まらずに教官室へ行く」
 タチヒトは、教室を出た。
「おいタチヒト、大事なPSP忘れてる」
「それアトヤマの武器だぞ」
 俺たちは、第二美術室を出た。






256 名前: 1 2007/01/07(日) 20:39:54.32 ID:s936oG6t0

<回顧>
 
 
 マミはまだ寝ていた。 
 気持ち良さそうに、すやすやと。
 もうそろそろマミを起こして、作戦を練りたい。
 しかし、マミの精神的なショックは大きいだろう。
 疲れているだろう。それを思い、もう少し寝かせてやることにした。
 俺は3時間前のマミの様子を思い出す。
 放心状態。そんな言葉がぴったりだった。 
 マミはA階段からふらふらと降りると、そのまま倒れこんだ。 
 一瞬死んだのかと思い焦ったが、ちゃんと息をしていた。
 なので相談室に運び、しばらく寝かせている。
 あれから3時間。銃声が数えるほどしたが、あとは全然音沙汰なし。
 一体あとどのくらい生きているのだろうか。
 ポケットに入っているマタマのカラシニコフを取り出し、眺める。
 黒い銃身がカッコイイ。だが、これはモデルガンではなくて本当の銃。
 心なしか、重かった。まだ弾も入っている。
 マタマは俺らを庇って死んだ。
 複雑な思いがこみ上げてくる。2学期にあいつをおちょっくていたことを思い出した。
 からかってもあいつは少し怒る素振りを見せるだけで、決して切れなかった。
 ……マタマは、弱虫なんじゃなくて優しかったんだな。
 そんな思いが頭をよぎった。
 
 マミはまだ寝ている。







258 名前: 1 2007/01/07(日) 20:42:31.16 ID:s936oG6t0

<必然>

「チャーキ!!」 
 職員室の前の廊下にさしかかると、急にタナカが走り出した。
 よくよく目を凝らすと、保健室の前に黒い塊が3個あるように見える。
 その黒い塊が死体だとわかったとき、猛烈な吐き気を催した。
 そういえば、この殺し合いが始まってから僕は死体を一体も見ていない。
 ユアサが首を吊っているのは見たが、影だけでリアルではなかった。
 今目の前には足が無いフジチカ、首に矢が刺さって倒れているヒトエ、そしてチャーキが倒れている。
 腐敗臭が鼻を突く。目まいがする。足の力が抜けて僕は廊下に座り込んでしまった。
「……タナカー?」
 今にも消えて無くなりそうなチャーキの声。
「チャーキ! 大丈夫? ケガとかしてない?」
「ん……大丈夫」
 早口でまくしたてるタナカの声と小さくか細いチャーキの声が対称的だ。
 どうやらチャーキは生きているらしい。だが、あの様子だと弱っているな。 
「コーク。 チャーキをおんぶして5組に戻ろう」
 タナカの声。僕は辛うじて立ち上がる。 
「……自分で持たないのかよ」
「早く!!」
「了解っ」
 怒鳴り声が2階に響く。
 力が入らない足で僕はよたよたと二人の方へ向かった。
 タナカに抱えられてチャーキは眠っていた。
 いや、気絶していたのかもしれない。







260 名前: 1 2007/01/07(日) 20:48:37.96 ID:s936oG6t0

安らかな寝顔。まさか、こいつがヒトエとフジチカを殺したなんて考えられない。
 ヒトエとフジチカが相討ちになった。そこに偶然チャーキが通りかかった。刺激が強すぎて気絶した。
 これしか考えられないな。
 僕はチャーキを背中に背負う。予想以上に軽かった。
「じゃ、戻ろうか」
 反応せずに無言で歩き出すタナカ。
 僕は地図を制服の右ポケットに放り込み、ゆっくりと歩き出した。
 皆、僕達が知らない所で派手に殺しあってるんだな。
 薄暗い廊下に、ヒトエとチャーキの血が飛び散っているのが見えた。
 
 A階段前で、人に出くわしてしまった。
 時間が停止するのを感じた。
 僕の目の前に、ヨシダとマミが立っていた。
 お互いの時間が、停止する。
 
「行け」
 一言ヨシダが言った。その瞬間、僕は走り出した。
 さっきまで軽かったチャーキがやけに重く感じた。







261 名前: 鯣 2007/01/07(日) 20:51:47.54 ID:AhYIiXpj0

追いついた 拓郎死亡フラグktkr






262 名前: 1 2007/01/07(日) 20:52:25.21 ID:s936oG6t0

*

 自分が何をしたか、わかっているのか。
 私の前には、ポカンとしているカキミちゃん。まだ倒れているキヨミちゃん。
 そして、気絶しているロクコちゃん。
 
 私が、やったのだ。
 私のスタンガンで、ロクコちゃんを気絶させた。
 仕様がなかった。気絶させなかったら、カキミちゃんとキヨミちゃんが殺されてた。
 汗で手が湿っている。何だか寒くなってきた。
「……どうしよう」
 視界が歪む。
 逃げなくちゃ。ロクコちゃんが、目覚める前に。
「マツバラ」
 背後から声が聞こえた。カキミちゃんだ。
「逃げよ」
「うん」
 スタンガンをリュックに急いでいれて、私は視聴覚室から逃げた。
 カキミちゃんがキヨミちゃんを背負ってその後に続く。
 とにかく走った。美術室の方へ。ロクコちゃんが目覚める前に。
 疲れなど感じない。走った。走った。恐怖から、逃げた。
 C階段前、2階の突き当たりまで逃げた。
 とにかく走った。怖くて、怖くて。
 後ろを振り向く。






263 名前: 1 2007/01/07(日) 20:52:58.31 ID:s936oG6t0

 誰も居ない。
 
 カキミちゃんは、どうなったのだろう。
 まさか。まさか……ありえない。
 ロクコちゃんが気絶している限りそれはありえない。
 
 ものすごい悪寒に襲われた。

 




264 名前: つまみな 2007/01/07(日) 20:53:17.54 ID:gFmtSsMMO

おもろwww







265 名前: 1 2007/01/07(日) 20:53:38.14 ID:s936oG6t0

<加害>
「別に………そんなこと、思ってないよ」
 声が聞こえる。
「……別に、私は殺し合いなんてしたくないよ」
「それも嘘なんでしょ?」
 ……カキミ。そして……ロクコちゃん?
「いや、嘘だね。だったらその血のついたサーベルは何さ? え?」
「…………これは、ね」
 お腹に激痛が走る。
「身を守るための道具、だよ。ニヒャヒャヒャヒャヒャヒャ」
 痛い。痛い。とにかく痛い。
 悲鳴もあげられない。痛すぎる。
「キヨミっ!」
 カキミちゃんの叫ぶ声が耳の中に入ってくる。
「安心してよ、カキミちゃん」
 ロクコちゃんの声がする。お腹の痛みがだんだんと激しくなっていく。
「あなたもキヨミちゃんと一緒に昇天させてあげるから」
「死ぬのはお前だろ!」
 銃声。
「…っ……っ!」
「死ね! 死ね! 死ね!」
 銃声で鼓膜が破けそうだ。私はしばし痛みを忘れた。銃声があまりにも大きくて。






267 名前: 1 2007/01/07(日) 20:55:28.12 ID:s936oG6t0

 何かが倒れる音がした。
 私の、そばに倒れる音がした。
 
「キヨミ! 大丈夫、キヨミ!!」
 カキミのすがるような声。私は声を出そうとする。
 が、出ない。
 そういえばお腹の痛みもだんだん引いて来ている。
 カキミが騒いでいるのもだんだん聞こえなくなってきた。

 また、何かが倒れる音がした。
「……痛っ」
 カキミの声だ。
 おかしい。ロクコちゃんはカキミに銃殺されたんじゃなかったのか。
「死ぬかと思ったじゃないの」
 
 包丁が、肉に刺さる。
 そんな音が聞こえた。
 
 【16人】






269 名前: 1 2007/01/07(日) 20:59:07.83 ID:s936oG6t0

「ぎゃあああああああああああああああああああああああ!!」 
 脇腹の次は、背中。
 背中の次は、右肩。
 右肩の次は、左肩。
 ロクコちゃんが、私の肩にサーベルを刺している。
「防弾チョッキとか、思いつかなかったでしょ?」
 左肩に何度もサーベルを刺され、私の喉は悲鳴も出すことが出来なくなった。
「……痛いでしょ? 痛いでしょ? 私も痛かったのよ? 防弾チョッキでも、痛いものは痛いのよ?」
 意識が遠くならない。それどころか研ぎ澄まされていく。
「そーだ、あなたを使ってコイケちゃんとナホコちゃんをおびきよせようかなっ」
 ロクコちゃんは私の髪の毛を掴む。
 激痛とともに、私は引きずられる体制をとってしまう。
「ほら、一階に行ったら助けてって叫ぶのよ。そしたら命は助けてやるからね。もっとも、私が手を下すまもなく死ぬでしょうがねっ」
 キヨミは死んだだろう。おそらく。
 そして私も死ぬ。絶対。
 命乞いなんて、しない。
 そして、ナホコとコイケにも手を下させない。
 
 口に力をこめた。
 思いっきり舌をかんだ。
 口の中が生暖かくなる。
「ゲフッ……」
 痛みは、なかった。
「へぇ……自殺、か」
 ロクコちゃんが私の頭から手を離した。
「あんた、案外勇気あったんだね。ニヒャ」







270 名前: 1 2007/01/07(日) 21:01:48.56 ID:s936oG6t0

意識が遠ざかっていく。

無意識に手がポケットに伸びた。
冷たい鉄の塊。おそらく、……チョクジのヌンチャク。
思いっきりロクコちゃんの足目掛けて叩きつけた。
「……痛い!」
 その瞬間、ロクコちゃんの体制が崩れる。
 視界が狭くなっていく。
 今、私に出来ることはなんだ。
 それはさ、カキミ。自分に言い聞かせる。

 今ここでこの殺人鬼を倒して、コイケとナホコの戦況を有利にすることだよ。
 私は立った。
 





271 名前: 1 2007/01/07(日) 21:05:41.06 ID:s936oG6t0

「……っ……まだやる気なのかい…」
 ロクコちゃんは脛を押さえながらこっちを睨んだ。
「当たり前だ!!」
 叫んだら、何だか体が軽くなったみたいで。
 ヌンチャクを振り上げる。
 鉄と鉄の触れ合う音。
 ロクコちゃんはサーベルで私の攻撃を受け止めていた。
「あなた、そんなに苦労しなくてももうじき死ぬのよ?」
「知ってる!!」
 ヌンチャクを力の限り振り下ろす。上下運動を続ける。
「私は!! お前を殺して死ぬ!!」
「……お馬鹿さん」
 
 突然、目の前が真っ暗になった。
 何も見えない。だけど聞こえる。
 

「さよなら、カキミちゃん」


 【15人】







272 名前: 1 2007/01/07(日) 21:09:01.17 ID:s936oG6t0

<風流> 
 そして、あたしは思うわけだ。
 カキミの武器がペレッタで助かった、と。
 そしてあたしはしみじみと思う。

 友達の武器で殺されるなんて、幸せじゃない?
 
 カキミちゃんの死に顔は、安らかではなかった。
 そして、あたしが今一番みたい死に顔。
 裏切りもののマツバラちゃんを探さなきゃな。
 ニヒャ。ニヒャヒャヒャヒャ。

 視聴覚室の床の黄色い絨毯が、血で黒く染まっていた。







273 名前: 1 2007/01/07(日) 21:10:41.58 ID:s936oG6t0

<地味>
  
「で、そのウエモリにあげたおにぎりは何だったわけよ」
「毒入りだよ? 決まってるじゃん」
 ハシダの笑い声が空虚に響く。
 窓の外の街灯の光がトロフィーに反射して怪しく光った。
「……オオタケ、お前案外悪い奴だったのか」
「え? 俺はこの殺し合いで生き残る為に頑張っただけだけど」
「そういうもんか」
 
 オオタケが突然たずねてきたときは少しだけ驚いた。
 なにせ、この部屋には誰もこないと思っていたからだ。
 一階の一番隅っこ、しかも普段は誰も訪れない。
 だが、奴はやってきた。笑顔で。







274 名前: 1 2007/01/07(日) 21:12:53.36 ID:s936oG6t0

「で、ハシダ。お前の武器はなんだ」
「……これなんだが」
 俺はオオタケに武器を見せた。……武器といえるがどうか。
「アイスピック……ねぇ」
 オオタケが苦笑いする。俺もつられて笑った。
「いや、あながち馬鹿には出来ないぞ。映画のバトロワでそれで相手を殺した奴がいる」
「え、あれってR15じゃなかったっけ?」
 オオタケは少しだけ馬鹿にしたように笑った。
 よく笑う奴だと思った。
「馬鹿、そんなのあってないようなもんだよ」
「……ったく、お前は悪いよな」

 





277 名前: 1 2007/01/07(日) 21:16:04.51 ID:s936oG6t0

<意外>
「アトヤマ。作戦変更」
 暗くなった廊下に、天才タチヒトの声が気味悪く響く。
 あいつの声のトーンは少し高い。なおさら怖みが増した。
「……何すんの」
「栄光の間に突撃」
 タチヒトは一つ壁を置いて存在する栄光の間を指差した。
「確か……あそこってさ、トロフィーとか置いてあるところだよね」
「ああ。で、そこに手ごろな奴らが居たからよ」
 手ごろなやつって誰だよ。
 そういいそうになったが堪える。
 タチヒトの計算に間違えなど存在しない。
 タチヒトは間違わない。
 奴についていけば、確実に生き残れる。そう確信している。






278 名前: まつたけ 2007/01/07(日) 21:17:07.49 ID:R6cEdjsQO

前田館入脂肪フラグ?






279 名前: 1 2007/01/07(日) 21:18:34.27 ID:s936oG6t0

「じゃ、行くぞ」
 タチヒトはPSPをリュックの中にしまった。
 電源は付けっぱなしだった。
「電池切れないのか?」
「大丈夫。バッテリーをかっぱらってきてるから」
 改めて尊敬した。無言で栄光の間へ歩いていく。
 
 微かに声が聞こえた。
 栄光の間から。
 
 嫌な予感が、した。
 多分……いや、違うだろ。
 オオタケの声じゃ…ない。空耳だな。たぶん。
 俺もタチヒトの後を追った。

 




281 名前: 1 2007/01/07(日) 21:22:39.09 ID:s936oG6t0

<選択>
「……お前」
 ドアが開いたのに気付いた時はもう遅かった。
 トロフィーが軒並み崩れる音。
 そして一直線にこっちに歩いてくる足音。
「オオタケ!」
 ハシダの焦ったような声がした。俺も正直少し焦っている。
「ハシダ、俺に考えがある」
「何?」
「とりあえずお前はアイスピック持って入り口の方へ走れ」
「……お前、俺を殺す気か?」
 ったく、臆病な野郎だ。手持ちのおにぎりを投げつけてやりたい。
「良いから走れ!」
「……死んだら呪うからな」
 ハシダが嫌々ながらも走っていった。
 よし。俺の仕事を始めよう。







282 名前: 1 2007/01/07(日) 21:25:54.43 ID:s936oG6t0

即座にトロフィーを入り口の方へ放り投げた。
何個も、何個も。
ものすごい音がする。案外トロフィーって重いんだな。
ハシダの声。少しくらいの負傷は仕様が無いだろう。
相手がほんの少しでもひるめば、それで十分。
俺は先が剣のようになったトロフィーを持って入り口の方へ走った。

「オオタケ! 早く来てくれ!!」
 息絶え絶えなハシダの声。
 ……一体、誰が来たんだ?
「俺じゃ一人が限界だ! 早く!」
 目を凝らすと、ハシダの下に何かが刺さった死体が転がっていた。

 アトヤマ。







295 名前: 1 2007/01/07(日) 21:33:23.26 ID:s936oG6t0

<過去>

 足の力が抜けて、その場にへたり込んだ。
 アトヤマ。お前……本当かよ?
 
 アトヤマと俺は幼いころからの親友だった。
 マミとマタマ、チャーキとタナカ、そしてアトヤマとオオタケ。
 3-2同性愛コンビとも言われたもんだ。
 正直、少しアトヤマのことが好きだったかもしれない。
 あいつはいつも素直で、でもなんか意地っ張りで。
 馬鹿正直に物事を信じ込む。
 バレンタインに一度冷やかしでチョコを入れたときも、笑顔でこういった。
「アトヤマ、ありがとな! 俺チョコなんて貰ったことねーよ!!」
 
 そして、また人影。






296 名前: みつば 2007/01/07(日) 21:35:23.22 ID:cSfS5FMXO

ウホッ






297 名前: 1 2007/01/07(日) 21:36:39.10 ID:s936oG6t0

「使えない駒ってのは、要らないんだよね」
 聞いたことないような声。
 俺は顔をあげる。
 トロフィーを構えた、タチヒトがそこに居た。 
 無表情。トロフィーに光が反射して色白の顔が浮かび上がっている。
「ま、あいつの価値ってのはPSP持ってた。そんだけだね」
「……あいつって…誰だよ」
 ハシダが怯えて後ずさりしているのがわかる。
「あいつ? そこに倒れてる馬鹿のことだが?」
 アトヤマの体を無造作に蹴るタチヒト。
「アトヤマ……ここは逃げたほうが良いと思うぞ」
「お前ちょっと引っ込んでろ」
 
 決めた。決めたぞアトヤマ。
 俺はここでタチヒトを殺す必要があるみたいだ。







298 名前: 1 2007/01/07(日) 21:39:15.10 ID:s936oG6t0

「へぇ」
 タチヒトは無表情のまま、話している。
「お前、人殺せたのか?」
「ま、そこそこには」
 何も考えるな。何も考えるな。
 全神経をタチヒトを殺す為だけに集中させろ。
 トロフィーの矛先をタチヒトに向ける。
 早く、殺さなきゃ。早く、殺さなきゃ。
 だが無意識にこんな言葉が口をついた。

「謝れよ」

「は?」 
「アトヤマに、謝れよ!!」
 タチヒトは一瞬表情を崩したがすぐに元通りの顔に戻った。






299 名前: 1 2007/01/07(日) 21:42:14.67 ID:s936oG6t0

「気が触れたか」
「謝れっつってんだろ!!」
 あー俺かっこ悪ぃ。なにやってるんだ。
 ただ向かい側のタチヒトを殺せばいいだけなのに。殺せない。
「話すと時間と体力の無駄だということが今判明した」
 タチヒトは一歩だけ後ずさりする。
「盗聴と普段の生活の様子から、お前は人を直接的に殺すことは不可能だ」
 そしてゆっくりと俺のほうへと近づいてくる。
「ほら、殺してみろ?」
 そうだ俺。あいつを殺せ。
 それだけでアトヤマの償いになるんだ。さっさと殺せよ。
 殺せ。殺せ。
 
 体が硬直して動かない。







300 名前: 1 2007/01/07(日) 21:46:41.37 ID:s936oG6t0

「お前に殺しなんて無理だ、オオタケ」
 瞬間、激痛が走る。
 体にトロフィーを投げつれられた。
 そう気付いたか気付かないかの間に、タチヒトが俺の目の前に立っていた。
 そして、すばやく俺の、首を、絞める。
「アトヤマの野郎、オオタケは大丈夫かオオタケは大丈夫かってうるさかったぞ。
 さっさとあの世行って報告してやってくれ」
 苦しい。
 アトヤマに、俺が、できる事。それは何だ?
 さっさと死んで、アトヤマと合流することか?
 うっすらと目を開けると、タチヒトが少しだけ虚しそうな顔をしているのに気がついた。
「……し…ね」
 精一杯の声を絞り出したつもりだ。
 
 タチヒトの締め付けが弱くなった気がする。






301 名前: 1 2007/01/07(日) 21:49:58.84 ID:s936oG6t0

「なぁお兄ちゃん。俺の存在忘れてただろ?」
 気がつくと、タチヒトが入り口の方向へ吹っ飛んでいた。
「……オオタケ。なんか知らないけど、俺あいつが憎たらしくなってきたよ」
 ハシダが不適に微笑む。
 アトヤマには、似ても似つかない。
 クラスの地味な奴ランキング1位を独走中。 
 そんな奴だ。ハシダは。
 なのに、一瞬だけかっこよく見えた。気のせいか?
「……計算通り。ここでお前が俺に抵抗するのも全て計算通りだよハシダ」
 タチヒトは、笑った。
 もう教室の中は真っ暗に近かった。







304 名前: 1 2007/01/07(日) 21:54:19.49 ID:s936oG6t0

「ハシダ。お前は人が殺せるか?」
「………あれ、お前人だったっけ?」
 ハシダはわざとらしく大笑いした。
「お前さ、人間コンピュータだろ? 俺自作コンピュータ作るのが好きでさ。
 んで、出来損ないのパソコン分解するのは慣れてるんだ。一丁、お前を分解してみるかな」
「かっこつけたセリフを長々と」
 タチヒトは入り口に手をかけた。
「じゃぁな。お前らがいつまで生きてられるか楽しみだぜ」
 そして慌しく廊下に出る。
 10秒ほどの間。
「……逃げたのか」
 ハシダが呟いた。
 後に残されたのは、アトヤマの死体。
 アイスピックが突き刺さっている。
「アトヤマ……」
 涙は、出なかった。
 アトヤマが死んでいるという実感がわかない。
 修学旅行を思い出す。寝ているアトヤマの顔に落書きをした。
 寝顔を写真にとった。その写真は今でも俺のデスクマットの中にある。







307 名前: しゅんぎく 2007/01/07(日) 21:57:34.40 ID:snW3ro19O

ハマって読んでしまう。
才能あるんじゃね?







308 名前: 1 2007/01/07(日) 21:57:55.03 ID:s936oG6t0

アトヤマを抱きかかえてみる。
まだ暖かい。
アトヤマの顔を少しだけ触ってみる。
まだ柔らかい。

アトヤマの心臓に耳を当ててみる。
音は、していない。
「……アトヤマ」
 返事は、しない。
「アトヤマ」
 返事は、しない。
「おいアトヤマ! 起きろ! アトヤマっ!! 頼む! 起きろ!!」 
 返事は、ない。
「………アトヤマ。頼む」
 返事は、ない。 

 その時、目から液体がこぼれた。
 泣いた。目から涙がとどめなく、零れ落ちる。






310 名前: 1 2007/01/07(日) 22:00:48.88 ID:s936oG6t0

 数秒後。
 
 俺はアトヤマの隣で、死に絶えようとしていた。
 ありがたいのか、悲しいのか。
 何が起こったのか。わからない。 
 でもこれで、きっと、アトヤマに、会えるはずだ。
 
 俺はもうすでに吹っ飛んでしまった手でアトヤマの体に触れようとした。
 アトヤマの体は、そこにはなかった。 
 あるのは、生々しい内臓だった。 
 良い。それがアトヤマの一部なら。


 【13人】





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コメント

  1. 名前:名無しのネタ鍋奉行 投稿日:2007/02/18(日) 03:13 ID:-No.1855

  2. 感動した・・・・・・!!

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